セキュリティーシアター
セキュリティーシアター(security theater)は、実際の安全性はほとんど高めないのに、人々に「守られている2」という感覚だけを与える対策を指す言葉。アメリカ21のセキュリティ5専門家ブルース・シュナイアー2が、2003年の著書『Beyond Fear』で使い広めた※1。2001年の同時多発テロ以降のアメリカの空港保安検査を批判する文脈で定着し、現在では情報セキュリティや企業のコンプライアンス対応など、見せかけの対策全般に使われる。
「感じ」と「実態」のずれ
シュナイアー2は、セキュリティには「安全だと感じること(feeling)」と「実際に安全であること(reality)」の2つの面があり、両者は一致しないと論じた。『Beyond Fear』では、対策の中には安全の実態ではなく安全の感覚だけを提供するものがあり、それはセキュリティーシアターにすぎず、せいぜい気休めだと書いている。
この言葉が指すのは、効果が小さいわりに目立つ対策である。シュナイアーが空港について挙げたのは、身分証の確認や、液体の持ち込み制限、目に見える場所での武装した警備などで、テロを防ぐ効果に比べて手間やコストが大きいと批判した。
擁護の議論
シュナイアー自身は、セキュリティーシアターを一律に否定しているわけではない。2007年の論考「In Praise of Security Theater」では、人々の不安が実際のリスクより大きいとき、見せる対策が感覚を実態に近づける役に立つことがあると述べた。例として挙げたのが、1982年のタイレノール毒物混入事件のあとに広まった市販薬の改ざん防止包装で、実際の防止効果は限られていても、人々が安心して薬を買えるようになった。
一方で、感覚が実態を上回るほどの演出は、かえって危険だとも述べている。対策が見せかけだと知られずに状況が悪化すれば、人々は必要な警戒を解いたままになる。
用法の広がり
現在では、物理的な警備に限らず、次のようなものにも使われる。
- 頻繁なパスワードの強制変更や、複雑すぎるパスワード規則
- 中身を確認しないままチェックリストを埋めるだけの監査やコンプライアンス対応
- メール本文に添付するだけのパスワード付きZIPファイル(日本でいう「PPAP」)
いずれも、手間がかかって目に見えるわりに、守りたい対象への効果が小さいという点で共通している。
参照
- Security theater - Wikipedia
- Beyond Fear: Thinking Sensibly About Security in an Uncertain World - Wikipedia
- In Praise of Security Theater - Schneier on Security
- Bruce Schneier: The Psychology of Security - CSO Online
- Everything We Know About Security Is Wrong - Schneier on Security
- Security Theater - Barry Popik
- What is security theater? - TechTarget