アンディ・マツシャック
アメリカ21のソフトウェアエンジニア・独立研究者。「思考のための道具(tools for thought)」、すなわち人が考えたり学んだりできる範囲そのものを広げる道具をつくることをテーマに活動している。Apple で iOS の開発に携わり、その後 Khan Academy で研究開発を率いた経歴を持つが、現在は組織に属さず、自身のパトロンからの支援を受けて研究を続けている。ノート手法「エバーグリーンノート」の提唱者として、また読んだ内容が記憶に残る新しい書き物の形式を探る研究者として知られる。
エバーグリーンノート
ニクラス・ルーマン2のツェッテルカステンに影響を受けつつ、デジタル4環境を前提に組み直したノートの書き方。会議や読書のたびに使い捨てられる一時的なメモとは対照的に、ノートを長期にわたって育て続ける対象として扱う点に特徴がある。1つのノートには1つの概念だけを書く、内容ではなく概念を単位にタイトルを付ける、ノート同士を密にリンクさせる、といった原則を置き、知識が時間とともに蓄積して結びついていく状態を目指す。
マツシャック自身の作業ノートは notes.andymatuschak.org で公開されており、この手法の実例であると同時に、個人の思考過程を未完成のまま公開する「デジタルガーデン」形式の代表例としても参照されている。
「Why books don't work」
2019年に発表したエッセイ3。本を最後まで読んでも内容がほとんど残らないのはなぜか、という問いに対し、本が機能しないのは講義が機能しないのと同じ理由である、と答えた。すなわちどちらの媒体も、人が実際にどうやって物事を身につけるのかについての明示的な理論を持たないまま、「読めば/聞けば伝わる」という素朴な前提の上に成り立っている、という指摘である。この論考は彼の以後の研究の出発点になっている。
ニモニック・ミディアムと Quantum Country
上記の問題意識から出てきたのが「ニモニック・ミディアム(mnemonic medium、記憶の媒体)」と呼ぶ書き物の形式である。本文を読み進める途中に間隔反復(スペースドリピティション)の設問を挟み込み、読者が内容を思い出す作業を読書そのものに組み込んでしまう、という発想にもとづく。
この形式を実装した代表例が、物理学者マイケル・ニールセンとの共同による量子コンピューティング2の入門書『Quantum Country』(2019年)である。さらに、この仕組みを彼ら自身のコンテンツに限らず一般の書き手が使えるようにするためのシステムとして Orbit を開発している。
独立研究者としての活動
2019年以降、Patreon を通じたパトロンからの継続的な支援によって研究資金をまかない、大学にも企業にも属さない独立研究者として活動している。この体制自体を一つの実験として捉えており、毎年その年の研究の進捗や、独立研究者として活動することの実態についての振り返りを自身のサイトで公開している。
要確認
- Apple および Khan Academy での在籍期間と、正確な役職名・担当範囲(iOS の開発に携わった、Khan Academy で研究開発を率いた、とされるが年次までは確認できていない)
- 日本語表記に定訳がなく、「マチュシャック」「マツシャック」などの揺れがある
参照
- Andy Matuschak(公式サイト)
- Why books donʼt work | Andy Matuschak
- Evergreen notes | Andy Matuschak's working notes
- About these notes | Andy Matuschak's working notes
- How to write good prompts: using spaced repetition to create understanding | Andy Matuschak
- Andy Matuschak | Creating tools for thought | Patreon
- Reflections on 2020 as an independent researcher | Andy Matuschak
- Michael Nielsen - Wikipedia
- Andy Matuschak - Self-Teaching, Spaced Repetition, & Why Books Don't Work | Dwarkesh Podcast
- Zettelkastenの「デジタル系活用法」Evergreen notes | ナレッジスタック